#006 ガソリン税と暫定税率

ガソリン税減税からの新税??

最近話題のニュース、ガソリン税の暫定税率廃止法案と、その減税分の財源賄う新税。
暫定税率廃止案というと、2024年12月11日に自公国(自民党、公明党、国民民主党)3党の幹事長会談があり、「103万の壁の引き上げ」と共に合意があったにも拘らず、ラスボスこと宮沢洋一 税制調査会会長たった一人の「私は聞いていない」といった類の反対で三党の合意は反故にされ、最終的にはより予算が少なくて済む維新案「高校無償化」が採決されたのも記憶に新しい。

7.6兆円減税「103万の壁引き上げ案」を、5千億給付「高校無償化」に変えてしまった維新の罪は重いがその話はここでは控える。

この記事では、ガソリン税、暫定税率とは何か?という疑問から問題点、現在の争点、新たな問題を解説していこうと思う。

ガソリン税とは?

道路整備の財源として1953年に導入され、1954年に法制化された。
当時の日本は車が贅沢品であり、一般庶民は道路を使用していなかったため、道路整備や維持管理を車利用者から税として集めようという意図でガソリンに税が付された。
といっても、ガソリン税は販売1Lあたり53.8円 (2025年8月現在) という形でガソリン製造業者に課税されているものとなり、ガソリン製造業者はガソリン税額分を販売価格に転嫁する義務を負わないため、実質的にその性質は消費税と同じ直接税に当たります。消費税が直接税である理由は#004 消費税の真実で解説しているので、そちらをご確認下さい。
ガソリン税は揮発油税と地方揮発油税が合わさっており、地方揮発油税は地方の財源が。。。などという説明は、全く意味がないと考えるため、ここでは省く。

ガソリン税率の問題点

ガソリン税は導入時、目的通り「道路整備」にしか使えない特定財源であり、その使い道の計画、実施の実権を握っていたのは国土交通省であった。
が、しかし、2009年から道路特定財源制度が廃止され、税収が使い道が特定されない「一般財源」となり、管轄が財務省に移ったのである。
また、ガソリン税には二重課税問題というものがあり、簡単に言うと税金に税金が掛かっている状態を指す。
ガソリン販売1Lあたりに53.8円(2025年8月現在)のガソリン税がガソリン製造業者に課せられ、さらにガソリン製造業者はガソリン販売価格 x 10/110の消費税納税義務も有する。

ここで一言

2008年頃に話題にあがった(らしい)のが「国交省による特定財源の無駄遣い問題」。この問題が取り上げられ、国交省叩きが起き。程なくしてガソリン税は特定財源から一般財源となる。どこかの省庁の圧力だろうか。。。
一般財源となったことにより、ガソリン税が道路以外に使われているなどの批判したい気持ちはわかるが、そもそも税は財源ではない。詳しくは#002 扇の要 「税と財源」「国債」で解説している。
敢えて政府の土俵に上がって矛盾を指摘することで、政府の不誠実さ、欺瞞を晒すも大事だが、行き過ぎないようにしよう。だって税は財源ではないのだから。

暫定税率とは?

1974年のオイルショックにより、道路整備財源不足という理由で、2年間だけ暫定的にガソリン税を一定額上乗せして、財源の不足分を補うという意図で導入された。
上乗せされた金額は2025年8月現在、販売1リットルにつき25.1円となっており、これは上で説明されたガソリン税53.8円に含まれている。
この暫定税率にはトリガー条項というものがあり、ガソリンの全国平均小売価格が3ヶ月連続で1リットル160円を超えた場合に暫定税率分を免除する制度だ。

暫定税率の問題点

そもそも2年間だけという名目で導入されたにも関わらず、なんやかんやで現在まで50年間続いている。いくらなんでも続きすぎだろ。
加えて、上記で説明したトリガー条項だが、原油価格の高騰、円安などが原因で2022年頃からガソリン価格は160円を上回リ、トリガー条項発動条件の3か月連続などとうに超えており、トリガー条項発動の条件は満たしている。しかし政府は2011年に起こった東日本大震災による復興財源の確保を理由に、トリガー条項を凍結(発動させない)したのである。

ここで一言

アメリカの要望により、2023年度から防衛費を増額した際に、その財源を特別復興所得税から一部転用するとの旨の発言が時の首相 岸田文雄氏からあった。
被災地の復興スピードも遅く、今もなお一部被災者は仮設住宅に住んでいる現状があるが、2023年であればなおの事である。このような状況下での復興税を転用してよいのだろうか?そして、この復興財源の転用で更なる復興財源確保を理由にトリガー条項凍結は維持となった。
以上の政府の動きからその意図を読み解くと、”アメリカ指導の”防衛力増強は復興に優先するが、復興は国民の生活に優先すると読み取れる。

現在の争点と新たな問題

暫定税率の廃止が今政府で最も熱い話題となっている。野党一角を担うれいわ新選組を除く野党7党(立民、日本維新、国民民、共産党、参政党、日本保守、社民)が暫定税率廃止法案を提出しており、11月1日から暫定税率廃止がおおかた決まりそうだ。
これにより、ある程度の家計や特に企業のガソリン価格負担の軽減が期待されている。
しかし上記でも触れたように、恐らく自民党の発案だろうが、現在はいかにして減収分の財源を確保するかで与野党で協議しており、世間を今騒がせているのが、走行した距離に応じて課税するいわゆる走行距離税である。
政府は以前から、ガソリン税の減収を問題視しており、その原因はハイブリッド車や電気自動車の普及が考えられるため、全車種からあまねく税を徴収できる走行距離税をここで提案してきているのだろう。あくどいにも程がある。

また、暫定税率の廃止でガソリン価格が下がることで、物流コストが下がり、物価の抑制にも期待できると思われがちだが、暫定税率はレギュラーガソリンにのみ上乗せされており、9割の物流トラックに使用される軽油は対象外であるため、暫定税率廃止のみでは思ったほどの影響は見られないと予想している。

ここで一言

一般財源であるが、道路整備の名目で徴収されている税は2つある。

一つはここで説明しているガソリン税。ガソリンの使用分、即ち車両を使った分だけ税を負担する仕組みである。

もう一つは重量税。車両の重量によって道路に対するダメージも大きくなるため、公平性を保つ観点から2年に一度(車種によって頻度は異なります)使用している車両の重量に伴った税を負担する仕組みです。

「税は財源」という政府の嘘理論を100歩譲って受け入れたとしても、走行距離税は「走った分」即ち「使った分」となるため、徴税の対象がガソリン税と被っているため、これも二重課税に当たると私は考える。

まとめ

元々道路整備という特定の目的で重量税、ガソリン税、暫定税率は導入されたが、現在は一般財源となり道路整備という意義ほとんど失われたといっても過言ではない。
しかし、政府はPB黒字化や財源不足を理由に、暫定税率をずるずると50年も延長。そして復興という大義を盾にトリガー条項を凍結するだけでなく、一般会計であることをいいことに復興で集めたお金を防衛費に流用。そして流用した分を補填するため再度復興のため、道路整備のためという旗を振って増税に走る。
なるほど、嘘はついていないし、ルールに則り財政を運営している。しかし国民がこれら全てを理解しているかというと全くそうではなく、この一連の流れを鑑みると政府の動きはかなり不誠実であると判断できるだろう。

現在の与野党の協議で暫定税率が11月に廃止される予定だが、与党の後押しで走行距離税などの別の税金が生まれる可能性が非常に高い。また、暫定税率は軽油には上乗せされていないため、廃止されても物流コストの低下は見込めず、物価抑制にはそこまで期待できない。

最悪の場合、別の税金だけ作られて「減収分を賄えていない」という理由で、暫定税率廃止が見送られ、国民も期待した物価抑制の効果を得られないため、減税そのものに期待しなくなるということも予想される。財務省やPB黒字化を目論む政治家にとっては願ったりかなったりである。

だからこそ政府は暫定税率の廃止に加え、ガソリン税(揮発油税)の減税を同時に進めることで、燃料価格全体を引き下げ、日本経済の再活性化を図るべきなのである。そのためにも国民は、税金は政策実現のために必要不可欠なものであるという認識を見直し、まともな財政感覚を持ち、政府に訴え続けることが何よりも重要なのである。

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