前回の記事では、60年償還ルールという日本独自のルールを元に、日本政府が無駄に国債償還費という名目で予算を組んで国債発行費を膨らませることで、歳出面を大きく見せていることを解説したが、今回は歳入面での国の欺瞞と合わせて「ワニの口」について解説する。
先に結論を述べると、政府は都合の良いデータを使用し、国の歳入(収入)を少なく見せることで、歳出費の差を理由として財政がさもひっ迫しているような理論をメディアを通じて拡散し、国民に緊縮意識を蔓延させてきた。
その手口は以下である。
ワニの口とは
今やこの論法が嘘だと暴かれてから、ここ最近はあまり聞かなくなってきたが、2021年に当時の財務省事務次官の矢野康治氏が雑誌に寄稿し話題となった「矢野論文」に出てきた言葉であり、その当時多くのメディアで“経済専門家”やニュースキャスターが口を揃えて解説していた(らしい)理論である。
その内容とは、以下図のように一般会計歳出と一般会計税収を折れ線グラフを用いて、それら二つの歳出と税収の差がどんどん広がっているグラフの形を「ワニの口」に見立てたものである。

出典:財務省|財政を考える。https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202204_kanryaku.pdf
政府並びに財務省の説明は「日本は歳出は伸びる反面、税収はそれに追いついておらず、その穴埋めのために多くの借金(国債)を発行している。このままでは借金の総額や利払いは膨れ上がる一方であり、今の様な豊満財政をこのまま続けるといつか必ず財政は破綻する。そうなる前に政府は歳出と税収をバランスさせ、ワニの口を閉じるような努力をしなければならない。」
としているが本当だろうか?
他で比較する日本の財政状況
債務残高対GDP比率
以下は財務省やメディアが日本の財政状況の悪さをアピールする際に用いるグラフである。

出典:財務省|財政を考える。https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202204_kanryaku.pdf
ここからわかることは対GDP比で債務残高を見ると日本は他の先進諸国と比べて収入(GDP)に対してかなり多くの債務を抱えている印象を受け、日本の財政状況はかなり悪いように見えるがはたして本当にそうなのだろうか?
NETの利払い費
現在、アメリカの財務省が使用している財政指標として「NETの利払費対GDP比率」というものがある。
これは財政状況を債務残高ではなく「国債利払い費」から「中央銀行(日銀)への利払い費」と「外国債から入ってくる利息」を差し引いた「実際に国が負担する利払い費」を対GDP比率で表した指標である。
グローバルスタンダード(国際基準)が正しいかどうかは置いておいて、ことこれに至っては国際基準の方が正しい(よりマシ)というのは疑う余地がない。
簡単に例えると、国をある一家と見立て、その一家の財政状況を他の家(他国)のそれと比較した場合
今までの日本は、父親(政府)のみが抱える借金とに対する一家の収入(GDP)の割合を比較対象としているのに対して、
国際基準では、父親(政府)が抱えた借金から支払われる利子から、父親が母親(中央銀行)から借りている借金の利子と、他の家からの借金の利息分を差し引いた一家トータルでの利払い費に対する一家の収入の比率を比較対象としている。
※債務残高の大半を占める国債残高が自国通貨建てであるため元本分は永遠に借り換えてであり、実質負担は金利負担のみであることを前提とする。詳細はこちらへ
では日本のNETの利払い費対GDP比はどうなのか
OECD(経済協力開発機構)が発表したOECD主要国のネットの利払い費対GDP比を見てみる。

出典:http://mtdata.jp/data_91.html#OECD
結論から言うと、無茶苦茶健全である。
いうなれば、利払い費は完全にGDPで賄えている。
ここからわかることといえば、あれだけグローバルが大好きな政府だが、こと自分たちの主張を論じる際はグローバルスタンダードなど気にせず、自分たちに都合のよくなるような答えが導き出せるように、使用する数値を使い分けていることで明らかである。
ワニはいたのか?
ここでワニの口に話を戻すと、ワニの下あごは「一般会計税収」となっており外国債からの利息が含まれていないため、実際よりも小さく表れ、上あごの「一般会計歳出」は前回の記事で解説したように60年償還ルールという謎の独自ルールにより大きく表れている。
ではこれらを考慮して収入(税収+利息)、支出を改めると、ワニの口はどうなるだろうか?
グラフは見つけたが出典先がわからなず、こちらには載せられないため、ご自身で「ワニの口 嘘」などで検索して頂きたいが、その口は完全に閉じている。
日本にワニなど存在しておらず、財政状況も一切ひっ迫していないのだ。
まとめ
二回にわたり、政府の歳入と歳出に関する欺瞞を解説してきたが、いかがだっただろうか?
緊縮財政を進める政府や財務省は、今現在も的外れなデータと傀儡メディアを使って国民の不安を煽り、国民意識を彼ら(政府側)の意図するところとなるよう誘導していると筆者は考える。
あなたも今後ニュースや新聞などのメディアでたくさんのグラフなどのデータを目にすることがあると思うが、最低でも縦軸横軸が何か。その指標で本当にそう言い切れるのか?など一度立ち止まって考えてはどうだろうか。
グラフの作成者はこれによって何を表したいのだろうか?など疑いの目を持って分析するのもおもしろいと思う。
最後に筆者が確かに!!と思った、アメリカ作家マークトウェインの言葉を紹介する。
「数字は嘘はつかないが嘘つきは数字を使う。」
まずはコーヒー飲んで考える 
